Keywords : 低身長 成長障害 小柄 背がのびない 背が低い
低身長とは、同じ年齢の集団の内で平均値から2.0SD(SD=標準偏差)以下の身長をいいます。
簡単にいうと、同じ年齢の子供が100人いた場合に前から2番目より小柄という程度をいいます。
男女別年齢別標準身長体重表を用いて計算します。
計算式
身長SDスコア=(身長-現在の年齢の標準身長)/現在の年齢の身長の標準偏差
例 現在6才5か月で身長が103.5cmの男の子の場合
6才5か月の標準身長116.1cm、標準偏差4.9
身長SDスコア = ( 103.5 - 116.1) / 4.9 = - 2.57SD となります。
成長曲線に照らし合わせて判断することもできます。
男子
女子
低身長には様々な原因があります。
(1)体質性小人症
これは体質的なもので病気ではありません。お父さんやお母さんが小柄で...という場合です。
(2)思春期遅発症
いわゆる、“おくて”で、思春期の発来が遅い場合です。
最終的には正常身長に達することが多く、よく高校になって急に伸びたという人がいますが、それがこのタイプです。
(3)ホルモンの異常によるもの
成長ホルモンの分泌不全に基づく成長ホルモン分泌不全性低身長症や、甲状腺ホルモンの分泌不全による
甲状腺機能低下症などがあります。また、その他の病気によって成長ホルモンの分泌が低下する場合もあります。
(4)社会的原因によるもの
愛情遮断症候群など。家庭の崩壊などのため精神的な影響で身長が伸びない場合。
(5)思春期早発症
思春期が早すぎると、周囲のお子さんより早く大きくなりますが、身長が早く伸び止まってしまうために
最終的には低身長になることがあります。発症年齢によっては思春期を遅らせる治療をすることがあります。
(6)染色体の異常
女児の低身長の場合、ターナー症候群の場合があります。思春期の徴候がみられない場合があります。
(7)骨の病気
軟骨異栄養症では、極端な低身長になります。
(8)内臓の病気
慢性腎不全(腎臓の病気で尿がうまくつくられない)のお子さんは、身長の伸びが悪くなります。
(9)その他の病気
様々な原因がありますので、背が低いことについてお悩みの場合には、小児内分泌医にご相談ください。
1.過去の身長・体重のデータをグラフにします
過去の成長の記録から成長曲線をつくります。成長曲線から低身長の原因を推測できることもあります。
2.骨のレントゲン写真 骨年齢の評価
3つの年齢を評価します
暦年齢
男女別年齢別標準身長体重表から、その年齢の標準身長がわかります。
身長年齢
現在の身長が、どの年齢の平均身長にあたるかにより、身長年齢を求めます
骨年齢の評価
左手のレントゲン写真をとります。骨は成長ホルモンだけでなく性ホルモンの成熟作用などの
影響もうけ成熟します。Tanner-Whitehouse-2(TW2)に基づいた日本人標準骨年齢を用います。
これにより骨の年齢を求めます。暦年齢と骨年齢の差を調べます。ふつうは暦年齢≒骨年齢≒身長年齢となります。
3.血液検査
内臓の病気の有無や貧血有無などを確認します
ソマトメジンCや甲状腺ホルモンなどを確認します
4. 成長ホルモン分泌負荷試験、
脳下垂体はホルモン調節の中枢部分ですが、ここから様々なホルモンが分泌されるます。
分泌刺激に対する成長ホルモンの応答を調べます
下垂体機能検査または成長ホルモン分泌負荷試験について
成長ホルモンは、睡眠中に、最もよく分泌されます。寝入ってから3時間の間に20分ごとに採血し
睡眠の成長ホルモンを測定する検査法もあります。しかし入院して行う必要があり、入院検査という
環境によって睡眠が浅いことがあり、検査にばらつきが生じることがあります。
そこで、お薬を負荷することで体内の環境を変化させ、それに応じて分泌される成長ホルモンを時間を
おって調べる検査(成長ホルモン分泌負荷試験)を行います。2時間にわたり30分ごとに採血します。
5種類の検査がありますが、当院では以下の4種類を行います。
インスリン負荷試験
アルギニン負荷試験
L-DOPA 負荷試験
クロニジン負荷試験
図に示すように、成長ホルモンが肝臓に作用してソマトメジンC(IGF-1)を分泌させます。
このソマトメジンCも骨の成長に関わっています。ソマトメジンCの値は、成長ホルモンの分泌を反映しているといえますが、
食が細かったりなど栄養状態によっても変動することが知られています。甲状腺ホルモンも成長に関わっており、様々なホルモンが
成長に関わっています。
成長ホルモンは非常に高額であり、公的助成制度を用いて治療するというのが実際のところです。
低身長とされるのは-2.0SD以下ですが、この公的助成制度の適応となるのは-2.5SD以下の場合です。
また2種類以上の負荷試験で成長ホルモンの分泌低下が見られることが必要です。
それぞれの医療機関によって差があると思いますが、当院では-2.5SD以下で負荷試験を行った方の3-4割くらい
の方が成長ホルモン治療の適応となっています。
また診察や成長ホルモンの検査の過程で他の病気を疑う場合もあり、MRIなどの画像検査が必要な場合もあります。
このような検査が必要な場合に当院では、病診連携による提携医療機関で検査を行います。
成長ホルモンは体内にあるホルモンですが、外から注射し補充することについては、成長ホルモン治療の
経験のある小児内分泌医のもとで慎重に行わねばなりません。たくさん注射をしてスーパーモデルのように
すらっと背を高くする、というようなことはできません。あくまでも非常に小柄である方が平均身長に近付く
というようなイメージでとらえるべきと考えます。身長を少し改善できることで社会的ハンディを減らすことを
目標に、とお話しています。
学年が大きいお子さんの場合、背が低いことを気にしている方が多いと思います。
検査の結果、成長ホルモン治療の適応とならないお子さんは結果をどう受け止めるでしょうか。
「成長ホルモンが出ていてよかった」なのか、「治療できなくてどうしよう」なのか、本人にとっては治療という
可能性がなくなり残念かもしれません。私たち小児内分泌医は彼らの心の中までフォローできているでしょうか。
成長ホルモンの適応にならなかった場合にも、栄養や思春期発来時期など経過を定期的にみていくことが必要です。
当院では管理栄養士による栄養相談をはじめました。成長に必要な栄養のバランスなど、お気軽にご相談ください。